原子力機構の価値 ~原子力の社会実装に向けて~

日刊工業新聞にて毎週火曜日連載中

032 高速炉 日仏で研究開発

掲載日:2023年6月27日

高速炉設計部 高速炉プラント設計グループ
研究副主幹 高野 和也

04年に当時の核燃料サイクル開発機構に入社。「もんじゅ」の炉心核特性・遮蔽(しゃへい)特性解析手法の高度化に従事してきた。18年からはナトリウム冷却高速炉の日仏間研究協力に従事し、高速炉の炉心核特性・遮蔽特性解析手法の高度化、破損燃料位置検出計装の開発に携わっている。

タンク型 共通概念構築

耐震性など向上

日本原子力研究開発機構はフランスと共同で高速炉の研究開発に取り組み、耐震性や安全性、経済性を大きく向上させたタンク型ナトリウム冷却高速炉の概念を構築した。さらにシビアアクシデントや解析コード開発など実用化に向けた検討を進めており、より高度な高速炉への実装を目指す。

核燃料サイクルはウラン資源の有効利用や高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度の低減を目指すもので、高速炉はその実現のために重要なカギとなる。

このため原子力機構、高速炉の中で最も実用化に近いナトリウム冷却高速炉について、2014年にフランスと開発協力で実施取り決めを締結。両国の研究開発成果の最大化を目指した。

その一環として、12分野にわたる日仏の専門家を集めた特別チームを発足。仏原子力庁26人、フラマトム13人、原子力機構24人、三菱FBR12人の75人からなる編成で、研究データや設備をシェアし、高速炉プラントの仕様共通化概念の研究に取り組んだ。

日仏の利点反映

設計面では日仏の利点を反映。炉型は仏の原型炉フェニックス、実証炉スーパーフェニックスをもとにタンク型炉を採用した。炉心は低ナトリウムボイド反応度と呼ばれるもので、炉心燃料上部をナトリウム領域とすることで、冷却材沸騰時のナトリウムボイド反応度が低くなる設計とした。

これに日本が開発した高性能被覆管材や二酸化ウラン(UO2)ブランケット燃料を導入し、燃焼度や増殖比などの性能を大幅に向上させた。

なお原子炉容器が大きいタンク型は、日本の厳しい地震条件では耐震性の確保が難しいとされてきたが、耐震向上方策や免震システムを採用することで、日本でも十分、成立性があることを確認した。

安全目標クリア

この設計は第4世代原子炉として求められる安全目標をクリアするとともに、建設費についても軽水炉と同等の目標を達成可能である見通しを得た。

私たちは現在、シビアアクシデントやナトリウム化学、材料開発、解析コード開発など、具体化に向けた項目の検討を進めている。

国際協力を活用したこうした研究開発は、高速炉の実用化のための技術基盤の確立とイノベーションの促進に貢献するだけでなく、民間も含めた多様な炉型の安全性や経済性の向上にも資することが期待できる。